医学の常識ともいえる内容がどんどんアップデートされてきてますね。
最近、読んで非常に感動したのが、こちらの本。
糖尿病の中心に君臨してきたインスリンが、その座をグルカゴンに譲り渡すときが来た。
本書は、ホルモン・グルカゴンの血糖上昇に及ぼす影響をその作用機序からわかりやすく解説。
インスリンの欠乏が糖尿病の唯一無二の原因とみなされてきたこれまでの常識を大きく覆し、糖尿病の病態理解にパラダイムチェンジをもたらす画期的内容。
糖尿病はグルカゴンをコントロールできなくなった結果であるという未だどの教科書にも書かれていない糖尿病の地殻変動を解説する。
グルカゴンをターゲットにした治療薬の臨床試験の足音がすぐそこまで聞こえてきている。
これ、まさに糖尿病のコペルニクス的転回の内容です。
天動説が地動説になるぐらいの衝撃を受ける本でした。
簡単にこの本の重要部分をまとめると、こちら。
- 糖尿病ではインスリン欠乏の裏にグルカゴンの過剰分泌がある
- グルカゴンを抑えれば血糖値のコントロールがしやすくなる
- インスリンはグルカゴンを抑制する働きもしている
- 腸管ホルモンのGLP-1はインスリンとグルカゴン両方に作用して、血糖値をコントロールしやすくする
- 腸内細菌が食物繊維から短鎖脂肪酸を作り出し、その刺激でGLP-1が分泌される
この説が一般的になれば、糖尿病の治療だけではなく予防や対策においてもより確実にできるようになると思います。
さらに言えば、血糖値の乱高下、血糖値スパイクは体内の糖化を促進し、老化を加速させるものでもあります。
血糖値をコントロールしやすくなれば、それはダイエットやアンチエイジングにおいてもめちゃくちゃ重要な話になります。
動画でも解説しています。
ながら聞きしたい方は再生ポチでどうぞ。
詳しく見ていきましょう。
目次
糖尿病の原因はインスリン不足ではなかった、グルカゴンの暴走を止めるあるホルモンとは?
この本は、糖尿病の地殻変動、パラダイムシフトを起こす内容です。
というのも、今までずっと糖尿病は、血糖値を下げるホルモンであるインスリン側の問題だと考えられていたんです。
「インスリンの不足」、「インスリンの効きが悪い(インスリン抵抗性)」などによって、血糖値を下げることができない状態。
それが、糖尿病だったんですね。
なので、薬を使ってインスリンの分泌を促したり、それでも効かなくなってくれば、インスリン注射をやるようになってたわけです。
糖尿病の常識はインスリンの不足である
今までの一般的な糖尿病の病態というのは、下に引用しているように、常にインスリン分泌の不足が主題となってたわけです。
- Ⅰ型糖尿病・・・1型糖尿病は、膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞:べーたさいぼう)が、壊されてしまう病気です。β細胞からインスリンがほとんど出なくなることが多く、1型糖尿病と診断されたら、治療にインスリン製剤を使います。世界的には糖尿病全体の約5%が1型糖尿病と言われています。若い方を中心に幅広い年齢で発症し、生活習慣が関わる2型糖尿病とは、原因、治療が大きく異なります。
- Ⅱ型糖尿病・・・糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気(糖尿病の慢性合併症)につながります。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがあります(糖尿病の急性合併症)。
しかし、上記の本を書かれた稙田(わさだ)太郎医師によると、糖尿病の病態として、インスリン側の問題だけではなくその裏に隠れてグルカゴンの暴走があったということなんです。
グルカゴンというのは、膵臓のα細胞から分泌される血糖値を上げるホルモンです。
膵臓から分泌される血糖値をコントロールするホルモン
- インスリン・・・膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌される血糖値を下げるホルモン
- グルカゴン・・・膵臓のランゲルハンス島α細胞から分泌される血糖値を上げるホルモン
糖尿病になって血糖値のコントロールが上手くいかないのは、食事をして糖を取り込んでいるにも関わらず、グルカゴンが分泌されて、さらに血糖値を高めているという異常な状態があったんです。
インスリンの不足だけではなかったんですね。
普通であれば、食事をして糖質を取り込めば、血糖値は上がるのでグルカゴンの出る幕はありません。
食後、血糖値が高くなりすぎるのを抑えるインスリンが出てきて、上がり過ぎた血糖は肝臓に蓄えられます。
そして、肝臓で直接取り込めないほどの量があれば、脂肪に換えられて脂肪細胞に貯蓄されます。
そのような状況では、血糖値を上げる必要はありません。
だから、グルカゴンは出番がないんです。
がしかし、糖尿病の患者さんにおいてはⅠ型糖尿病、Ⅱ型糖尿病いずれにおいても、食事後にグルカゴンが分泌されて、さらに血糖を上げていることが分かったんです。
まさにグルカゴンの暴走、反乱です。
本の中には、その論拠となる例が多数書かれています。
中でも分かりやすいのは、膵臓を全部摘出した人と1型糖尿病の人との血糖コントロールの差。
膵臓を全部摘出した人の方が血糖値のコントロールがスムーズだそうです。
Ⅰ型糖尿病の場合、膵臓のランゲルハンス島のβ細胞が機能しておらずインスリンの分泌は少ない状態。
しかし、α細胞は機能しておりグルカゴンの分泌は過剰になっているため、血糖値は上がりやすくコントロールしにくいのです。
それに比べて、膵臓を全て摘出した場合、インスリンの分泌もありませんが、グルカゴンの分泌もなくなるため、血糖値はコントロールしやすいそうです。
インスリン不足の裏に、グルカゴンの暴走があるんですね。
インスリン不足の裏に隠れていたグルカゴンの暴走とその対策
グルカゴンの暴走が起こっていたことに今まで気が付かなかったのにも理由があります。
インスリンとグルカゴンは真逆の作用をするため、インスリンの不足、グルカゴンの過剰分泌でも結果が同じになるからです。
インスリンが不足すれば、血糖値は下げられず、上がります。
また、グルカゴンが過剰分泌されれば血糖値は上がります。
で、インスリンは人工的に合成することができるようになり、インスリン製剤として一般的に使われるようになります。
そのおかげで、以前は確実に死に至る病だった糖尿病も、インスリンで管理しながら長く生きていけるようになったのです。
糖尿病を完全に治すことはできなくても、症状を抑えて長生きできるようになったことで、治療法として確立されました。
そのため、グルカゴンに注目が集まることもなく、今まで影に隠れる結果になってたそうです。
インスリンはグルカゴンを抑制する作用もある
グルカゴンの過剰分泌が糖尿病の病態としてあるのですが、ではなぜグルカゴンが暴走してしまうのか?
その理由が大事ですよね。
実は、グルカゴンを抑制するのもインスリンの作用なんです。
膵臓の一部、ランゲルハンス島という細胞内に、グルカゴンを分泌するα細胞、インスリンを分泌するβ細胞があります。
これらは隣接して存在しているので、インスリンが分泌されれば、α細胞にも影響を与えてグルカゴンの分泌が抑制されるんですね。
しかし、糖尿病では、インスリン分泌が低下しているので、グルカゴンを抑制することができないのです。
食事をした後にもグルカゴンが分泌されて血糖を無暗に上げてしまうということです。
じゃあ、結局、インスリンの不足が問題じゃん!
と思うかもしれませんが、実はここで重要になってくる別のホルモンがあるんです。
インスリン、グルカゴン両方に作用する腸管ホルモンGLP-1
それは、GLP-1と呼ばれる腸管で分泌されるホルモンです。
このGLP-1は食欲を抑制し、肥満を予防するホルモンでもあり、ダイエットでも注目を集めています。
この腸管ホルモンのGLP-1は膵臓にも働くんです。
グルカゴンの分泌を抑制し、高血糖になりそうなときは、選択的にインスリン分泌を促進することが分かっています。
例えれば、グルカゴンの直属の上司はインスリンですが、グルカゴン、インスリン両方に影響を持つ社長のような存在がGLP-1になります。
それによって、インスリンも分泌を促進され、グルカゴンも直接的、間接的に分泌抑制されるわけですね。
GLP-1、スゴイ働きです。
大腸粘膜を刺激してGLP-1を分泌させる腸内細菌と食物繊維
じゃあ、GLP-1をしっかり分泌させれば、血糖値のコントロールがしやすくなるってことです。
そのために、何をしたら良いかと言えば、食物繊維を摂ることです。
食物繊維は小腸では分解、吸収されずに大腸まで届きます。
そして、そこで腸内細菌のエサになり、発酵、分解して短鎖脂肪酸が作られます。
短鎖脂肪酸というのは、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの総称です。
これが、大腸粘膜を刺激して、GLP-1の分泌を促進することが分かっているんです。
つまり、食物繊維豊富な食材を食べていれば、血糖値のコントロールがしやすくなるってことです。
食物繊維は糖の吸収を穏やかにする物理的な作用もありますが、腸内細菌とコラボして化学的な反応も起こしているんです。
こちらも動画にしていますので、合わせてご覧ください。
国際医食会議( ICNM )の2016年食事指針
「糖尿病はグルカゴンの反乱だった」に国際医食会議の食事指針も掲載されているのでシェアしておきます。
- 食事は植物性の食品、すなわち野菜、果物、全粒穀物、豆類などを基本に組み立てなさい
- 少なくとも毎日50~55gの食物繊維を 摂るように工夫しなさい
- 少なくとも毎日5~8gの植物由来のプレバイオティクス(善玉腸内細菌を育てる栄養源となる食品成分)を摂るように
- 発酵食品またはプロバイオティクス( 生菌)を加えなさい
- 赤身の肉、高脂肪の乳製品、揚げ物、食品添加物、AGE(終末糖化産物)を避けなさい
- 脂肪の摂取制限をしなさい(特に2型 糖尿病患者さんとそのリスクが高い人)
- 抗生物質の使用は必要最小限に止めなさい。
基本的に野菜を多くして、脂肪は少なく、発がん性や血管系疾患のリスクのある食品は避けましょうという内容です。
しかし、食物繊維を毎日50~55gってのは、今の日本人の食生活したらかなり難しいかもしれません。
意識して食材を選んでいかないといけませんね。
大麦が一押し、食物繊維豊富なおすすめ食材
最後に、食物繊維が豊富なおススメ食材をリストアップしておきます。
特にお勧めなのは、水溶性、不溶性のバランスも良く、量も多い大麦(押し麦)です。
ご飯と一緒に炊いて麦飯にするのが、良さそうですね。
- 大麦(押し麦)
- 海藻類
- リンゴ
- 柑橘類
- 根菜類
- 豆類
- しいたけ
などです。
膵臓における腸管ホルモンGLP-1の働きなどをみると、糖尿病や血糖値のコントロールに腸内環境も重要だと分かります。
日頃の食事から、食物繊維を摂りいれて、腸内環境を意識していきたいですね。
糖尿病のコペルニクス的転回、グルカゴンの反乱まとめ
何度も繰り返しますが、今まで糖尿病はインスリンの欠乏が主たる問題でした。
しかし、実はインスリン欠乏の裏でグルカゴンの過剰分泌があり、血糖値を上げていたという病態があったんです。
グルカゴンの分泌を抑えるのもインスリンですが、インスリンとグルカゴン両方に作用するホルモンもあります。
それが、腸管ホルモンであるGLP-1。
GLP-1は、グルカゴンの分泌を抑えて、血糖値が高くなる時はインスリンの分泌を促し、血糖のコントロールはより穏やかになります。
また、食欲を抑制して、肥満を予防する働きもあります。
このように超働いてくれるGLP-1は、腸内細菌が食物繊維を発酵、分解し短鎖脂肪酸を作るコトで分泌が促されます。
ゆえに、食物繊維が豊富な食材は血糖値のコントロールにおいて重要な働きをしてくれることになります。
食物繊維を意識して食べようというのは、こないだNHKあさイチでされていた糖質の新常識スペシャルと落としどころが同じですね。
さすがNHKというところでしょうか。
現代はスーパー、コンビニで買う食べ物のほとんどに糖分が入っているような糖質過剰の世の中です。
アンチエイジング、ダイエット、糖尿病予防に食事は意識しておいて損はないですね。
最後までお読みいただきどうもありがとうございます。
ダイエット中の食事や運動、メンタルのお悩みについてlineからも相談にのってます。
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